アニメ映画の記録的ヒットで社会現象になっている漫画「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」に登場するシーンとそっくりだとして、福島県会津若松市にある芦ノ牧温泉の旅館「大川荘」が、ファンの間で注目を集めている。
赤い浮き舞台
玄関に入りロビーを進むと、吹き抜けになった広い空間が広がり、地下1階が見下ろせる。階下へ降りる階段の踊り場には、ひと際目立つ赤い舞台がある。この「浮き舞台」と呼ばれるステージでは、多くの宿泊客が訪れる午後4時から同6時まで毎日、三味線の演奏が行われる。
「本当に無限城に来たみたい」―。そう興奮気味に語った家族ずれの宿泊客は、SNSを見て来たといい、「感動した」と話していた。
鬼の黒幕、鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)の本拠地として描かれる無限城では、鬼舞辻の側近、女の鬼が琵琶を弾く場面が登場する。これが三味線の演奏と重なるのだという。
この吹き抜けの空間が漫画に出てくる「無限城」に似ているとの話題がSNSに投稿されたのは、コロナ禍が始まった今春のことで、ネット上で盛り上がった。旅館はコロナのために2カ月余り休業を余儀なくされたが、営業再開後も盛り上がりは続いている。
ただ、旅館は漫画やアニメとの関係をPRすることなどは行っていない。むしろコロナ禍が続く中、密を避けるため宿泊客を絞っての営業が続いているという。
玉川福男総支配人(66)は「来年1月末までは週末を中心に、ほぼ予約は埋まっている状態。“鬼滅の刃効果”はもう少し続くと期待している。心から感謝申し上げたい」と話す。その上で「古くからのお客さまを大事にする姿勢はブレずにやっていきたい」と付け加えた。
旅館は、台湾メディアの取材も受けたといい、コロナ後のインバウンドにも期待したいと話している。
筆者:芹沢伸生(産経新聞)